新しい論文が出ました。佐賀県有明水産振興センターとの共同研究の成果です。
中村瑠美奈,岩永卓也,中原啓太,住吉大,寺田竜太 2023.
ノリ養殖採苗日の延期に伴って行われる殻胞子放出抑制処理がカキ殻糸状体の光合成光化学効率に及ぼす影響.
日本水産学会誌89 (6): 521–528
DOI: 10.2331/suisan.23-00024
ノリ養殖の採苗は,地先水温の状況を見ながら事前に採苗日を決めておき,採苗日に胞子体(牡蠣殻糸状体)の殻胞子の放出のピークが来るように放出誘導をします。しかし,台風等の荒天で採苗日を数日延期せざる得ない年が稀にあります。このような場合,殻胞子の放出誘導中にもかかわらず,成熟の進行を一時的に抑え,放出のピークをずらす技術があり,成熟抑制技術や殻胞子放出抑制技術と呼ばれています。今回は,この処理中の胞子体の光合成活性の変化をモニタリングし,この技術の妥当性を評価しました。その結果,ノリ養殖の工程で実際に実施された3日間程度の放出抑制処理では,光化学系IIの実効量子収率は安定して推移することが示唆されました。