Seaweed Research Journal

Seaweed Research Journal

高校生のみなさんへ:海の植物(海藻・海草)が勉強・研究できる日本の大学 (Phycology & Seagrass Lab in Japanese University; text only in Japanese)

大学で海の植物(海藻,海草)を学んでみませんか?
(2018年7月25日更新)

日本では,全国各地の大学で海の植物が研究されています。分類や生態,水産資源に関する研究だけでなく,(生物全体を含む)進化に関する研究や,沿岸域の環境保全,新たな産業創出に取り組む研究もあり,いずれも国際的に高い評価を受けています。

海の植物(主に海藻,海草)が学べる主な大学を下記に紹介しますので,希望の進路を見つける参考にして下さい。

注1:研究者の有無ではなく,関連科目を体系的に学び,研究室を選択できる学部に絞って掲載します(高校生向けのため)。
注2: 大学院重点化している大学でも,学部の組織体系で掲載しています(高校生向けのため)。

理学系の学部
理学部等では,生物学科または植物学科の植物系統学や植物生態学,海洋生物学の中で海藻,海草を学びます。海藻・海草に特化せず,幅広い生物(植物),生態を学びながらその一部として学びます。海藻・海草に特化した科目はありませんが,生物学に関する基礎を十分に学んでから,3年生後期(大学によっては4年生)から研究室に所属し,海藻・海草の研究に取り組みます。

農学・水産学系の学部
水産学部や農学部水産学科,海洋生物学科などでは,水産増殖学や海洋生物学系のカリキュラムの中に海藻を学ぶ科目が設けられています。 大学によって異なりますが,分類や生態を学ぶ「水圏植物学(水産植物学,藻類学など)」と増養殖や生理生態を学ぶ「応用藻類学(水産植物学II,海藻資源養殖学など)」の2科目程度(4-6単位)が開講されています。海藻・海草に関しては理学系よりも掘り下げた内容や増養殖法を学ぶことができますが,学ぶことは海の中のことや応用系に限られます。一般に,3年生後期(大学によっては4年生)から研究室に所属し,海藻・海草に関する研究に取り組みます。

臨海実習
どちらの学部も, 臨海実験施設で生きた海藻を学ぶ実習(1-2単位)が設けられています。また,理学部系の臨海実験施設では「公開臨海実習」が開講されており,他大学の施設で実習を受講し,単位を取得できます。海藻・海草では,北海道大学や神戸大学の実習が有名です。海産植物の研究室がない大学の学生さんでも,公開臨海実習で海産植物に関心を持ち,受講した大学院に進学する人もいます。

公開臨海実習のページ
http://www.research.kobe-u.ac.jp/rcis-kurcis/station/default.html

国公立大学
北海道大学理学部
北海道大学水産学部
北海道大学は日本の藻類研究で最も古い歴史を持つ大学のひとつです。研究室の歴史は古く,起源は札幌農学校と北海道帝国大学理学部にさかのぼります。系統進化学から細胞生物学,水産植物学(海藻の生理生態学,未利用資源の利用),プランクトン学(赤潮)に至る様々な分野の研究がおこなわれています。理学部と水産学部にそれぞれ研究室があるとともに,大学院環境科学院(水圏生物学コース)や大学博物館にも藻類海草の研究室があります。札幌や函館だけでなく,室蘭,厚岸などの臨海施設にも研究室があるのも特徴のひとつです。教員だけで10名ほどいます。

東京海洋大学海洋科学部
北海道大学と並んで古い歴史を持つ大学です。品川キャンパスにふたつの研究室(藻類学,応用藻類学)があり,藻類の系統分類学(海藻や珪藻)や生活史,生態学,磯焼けなどの環境問題を学ぶことができます。教員は両研究室併せて4名が在籍しています。海洋生命科学部と海洋資源環境学部のどちらに入学しても藻類を学ぶことができますが,海洋資源環境学部での研究は分類や種分化,海洋生命科学部では培養や生態に関する研究が中心です。大学は東京の都心(品川駅から徒歩10分ほど)にありますが,臨海実験施設は千葉県館山市にあります。

筑波大学生命環境学群生物学類
植物系統進化・微生物学分野
藻類を主な材料に,酸素発生型真核光合成生物の誕生や進化,多様性,生理学生態学,生化学,分子生物学,ゲノミクス,天然物化学に関する研究を展開しています。いずれの研究者も国際的に幅広く活躍しており,最近ではハテナ」や油を産生する藻類の研究で国際的に有名です。教員だけで10名以上います。大学はつくば市にありますが,臨海研究施設は静岡県下田市(伊豆半島)にあります。
Link: 筑波大学藻類研究リサーチユニット

東京大学理学部生物学科
多様性起源学研究室で真核生物の多様性と進化を細胞と分子レベルで研究しています。OTOKOGI遺伝子や真核生物の起源,植物の「界」レベルの体系などで国際的に有名な研究室です。研究室は本郷にあります。

神戸大学自然科学系先端融合研究環 内海域環境教育研究センター(理学部生物学科 
海産藻類の多様性と進化,系統分類,代謝生理,細胞構造,生態などに関する基礎的な研究と,その成果を活用した沿岸海域の環境保全に資する研究をおこなっています。海藻類の系統分類や生物地理学,移入種の問題等で国際的に有名な研究室です。内海域環境教育研究センターや理学部に教員5名が在籍しています。センターの本部は神戸市の神戸大学六甲キャンパスにありますが,マリンサイトは淡路島にあります。

海藻(大型藻)の研究室としては日本で最も南に位置し,熱帯亜熱帯性海藻の分類や生理生態,増養殖技術開発に関する研究をおこなっています。特に,島嶼域や東南アジア,ミクロネシア等でのフィールドワークや潜水調査に豊富な経験と業績を持っています。SCUBA用の重機材からボンベ,コンプレッサー(空気を充填する機械)まで常備しています。教員2名が在籍しています。研究室は鹿児島市にありますが,マリンステーションは天草に近い長島にあります。研究室は水産学部の水圏科学分野に所属しており,入学時に水圏科学分野を第一志望にすると卒業研究が可能です。講義自体はどの分野でも受講できます。教員は宮崎大学農学部と熊本県立大学環境共生学部でも講義をしていますので,これらの大学でも海藻に関する講義自体は受講可能です。

九州大学農学部(水産増殖学)
有用水産動植物の生活史や再生産過程の解明,増殖技術開発,東アジア・東南アジア地域における海洋動植物資源の開発に関する研究をおこなっています。研究室は藻類と魚類の研究者で構成されています。紅藻ムカデノリ科藻類やミリン科,ガラガラ類などの分類や系統進化学的研究で有名な研究室です。教員2名が在籍しています。研究室に入るためには,農学部に入学してから動物資源科学コースの水産科学に進学する必要があります。

長崎大学水産学部
長崎大学環境科学部
長崎大学には,海藻を専門とする研究室が3つあります。環境科学部には系統分類・環境保全に関する研究室,水産学部には有用海藻の凍結保存や生態の研究室,附属環東シナ海資源環境教育研究センターには,藻場生態系の成立要因に関する生物物理学・生理生態学の研究室があります。環東シナ海資源環境教育研究センターでは,流動が藻場の成立に及ぼす影響の解明等を行っています。長崎大学全体で教員3名が在籍しています。

三重大学生物資源学部
海洋生物科学講座の中に藻類学の研究室があります。海藻・海草類の生理生態学で有名な研究室です。教員1名が在籍しています。東海から近畿にかけての唯一の国立大学の海藻の研究室です。

福井県立大学海洋生物資源学部
海洋生物学研究室で藻類の研究をしています。種分化や生物地理,環境適応,生殖機構に関する研究で有名です。学部は福井県小浜市にあります。教員3名が在籍しています。福井県立大学海洋生物資源学部は広い意味では水産系の学部ですが,海洋生物学研究室の研究は理学系に近い内容(種分化や環境適応当)です。

広島大学生物生産学部
水産生物科学コースの竹原ステーション(水産実験所)に海藻の教員が在籍しています。大学院では,独立行政法人水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所の研究室が連携大学院として浅海域環境保全論の研究室を兼ねています。広島大学には長らく海藻の研究室がありませんでしたが,最近研究室ができました。

水産大学校
藻場生態系保全研究室で有用海藻の分類や生理生態,保全に関する研究をおこなっています。ホンダワラ類の生産構造や生産力,培養試験,アマノリ類の分類や生活史に関する研究で有名です。山口県下関市にあります。教員2名が在籍しています。文部科学省所管の大学ではなく,水産庁所管の大学校です。将来的には独立行政法人水産総合研究センターと統合する予定です。

お茶の水女子大学理学部生物学科
生物学科構造生物学講座に藻類の系統進化や自然史,保全に関する研究室があります。海藻が学べる唯一の女子大です。大学は文京区大塚(お茶の水ではありません)にありますが,臨海実験施設が千葉県館山市にあります。

高知大学理学部
細胞生物学研究室(大学院黒潮圏総合科学専攻)と海洋植物学研究室(海洋生物研究教育施設)で藻類の研究をおこなっています。海洋植物学研究室は高知県土佐市宇佐の臨海施設に設けられています。教員は両研究室併せて4名が在籍しています。

東北大学農学部(水圏植物学)
海藻群落の生態学について,主に藻食ベントス(海藻を食べるウニなど)や海藻の上で暮らす小型動物の点から研究しています。水圏植物学研究室に3名の教員が在籍しています。ウニ関する研究が有名です。

琉球大学理学部海洋自然科学科
藻類機能形態学微細藻類の研究室あります。理学系の学部では植物系統学の一部として藻類を学ぶところが多いのですが,流大では藻類に特化した「藻類学」の講義があります。最近,藻類の研究者が1名加わり,2名になりました。

新潟大学理学部
自然環境学プログラムに海藻を材料とする研究者が在籍しています。分類や系統進化,系統地理学に関する研究が中心です。

山梨大学生命環境学部
山梨大学教育人間科学部
生命環境学部環境科学科教育人間科学部学校教育課程に海藻・淡水大型藻類を材料とする研究者が在籍しています。静岡県沿岸の海藻植生の調査も行っています。

私立大学
海藻が学べる私立大学は意外と少なく,藻類を専門とする教員が在籍して卒業研究も可能となると以下の4大学になります。

東京農業大学生物産業学部
海洋水産学科の水産増殖学講座に海藻の教員が在籍しています。「東京」ですが,学部は北海道網走市にあり,日本最北端の海藻の研究室です。

東海大学海洋学部
静岡市清水にあります。海洋学部水産学科に研究室があり,研究内容は海藻や微細藻など,沿岸域の物質循環全体を対象としています。

北里大学海洋生命科学部
環境生物学講座に藻類の研究室があり,海産植物,付着生物の生理生態が学べます。学部は神奈川県相模原市にあります。

福山大学生命工学部
海洋生物科学科海洋植物科学研究室で海藻類の生物多様性や環境応答について研究しています。