ハワイ大学名誉教授のIsabella Aiona Abbott先生が10月28日にお亡くなりになりました。
アボット先生のご功績については吉田忠生先生のHPで掲載されていますので、そちらを参照下さい。
http://www.sourui-koza.com/y_topix/index.html
私は、博士課程在学中に参加した「7th international workshop on the taxonomy of economic seaweeds」 で初めてアボット先生にお会いしました。通常の学会やシンポジウムと違い、一週間朝から晩まで観察や討論、調査をしますので、様々なお話をする新鮮な機会でした。その後は論文を纏める際にご指導・校閲をいただき、博士を取得することができました。
2004年には、文科省の在外研究員としてアボット先生の下で1年間研究する機会を得ました。とても一言では言い表せませんが、私の研究者としての生き方に決定的な影響を与えたことは言うまでもありません。
当時85歳とは思えないお若さで、ご自分で車を運転して研究室に毎日(土曜日も)通勤されていました。また、毎週水曜日はビショップ博物館の勤務日で、私が運転してホノルル西部にある博物館に行き、標本の観察や整理をされていました。滞在中には、私の前に滞在していたJ. Huisman博士(オーストラリア)がアボット先生の85歳を祝してCryptogamie Algologieにアボット・トリビュート号を準備しており、私も感謝のメッセージと論文を寄稿しました。これはアボット先生に内緒で世界中の研究者が密かに準備していたもので、一番近くにいた私がうっかり口をすべらさないように気をつかったことを思い出します。
私的なおつきあいでは、滞在中に生まれた長男に名前をつけてもらいましたし、妹がハワイ大に近いマノア渓谷の教会で挙式したときは、披露宴会場の下見(と称したレストラン巡り)にも一緒におつきあい下さいました。色々なレストランで一緒に昼食を食べましたし、ご自宅にも何度もお招き下さり、太平洋が一望できるリビングで色々なお話をしました。アボット先生と回転寿司に行った日本人は、おそらく私だけかもしれません。
アボット先生の訃報に接し、親族を失ったような悲しみを感じています。心からご冥福をお折りいたします。
St. John Bld.の6階研究室にて(2004年)。長男の名前(米国籍名)はこの建物の名前に因んでいます。
寺田 竜太